シニアの食卓

独りシニアになっても慌てない、備蓄食の見直し〜前編

目安時間 21分
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前回の記事では、

 

配偶者の入院など、

独りシニアになった時に備えて、

家事能力の低い人がまず何をすべきかについてお伝えしました。

 

 

極短期間であれば、

家事能力が低くても、

市販の惣菜やお弁当、外食で対応することができますが、

奥様が1ヶ月くらい入院してしまった旦那さんの声としては、

外食疲れと言いますか、

 

  • 味に飽きた、
  • いつもの味を食べたくなってきた
  • 季節によっては外に出るのが億劫、
  • 家庭血圧計の数字が高くなってきたとか、

とか、そんな声を聞きます。

 

 

 

独りシニアになる前に

普段から、

自分の食べるものを用意できるよう準備しておきましょうね〜、

というのが前回の記事です。

 

 

今回は、

いざ独りシニアになった時に慌てないように、

備蓄しておく食品について考えてみましょう。

 

 

何歳からがおばさん?何歳からシニア?

 

 

面白いアンケートを見つけたのでご紹介します。

 

 

 

おじいちゃん・おばあちゃん・じいじ・ばあば

お年寄り、シニア、中高年・・・

 

 

色々な呼び方がありますが、

「何歳からがおじいさん、おばあさんですか?」

と聞いたアンケートがあります。

 

 

 

サントリーウェルネス株式会社が、

20〜70代まで、

年代別に年齢のイメージを聞いた「実感年齢白書2022」によると、

 

 

 

年齢のイメージは、

 

何歳から「おじさん・おばさん」?・・・平均49歳

 

何歳から「シニア」?・・・平均61.6歳

 

何歳から「お年寄り」?・・・平均73.1歳

 

 

だそうです。

面白いですね。

シニアとお年寄りにも、11歳近い開きがあります。

 

 

 

 

 

 

私の母は71歳、父は73歳で、「お年寄り」に該当しますが、

ここでは、より幅広い年代を示す「シニア」という言葉を用いて、

老いの準備を、食の面から考えてみたいと思います。

 

 

 

 

私の両親も数年前から、

部屋のレイアウトを変えたり、断捨離を少しずつ進めたり、

老い支度をしています。

 

 

 

 

しかし、

長年医療現場で困っている老年男女を見てきた立場として、

娘として、

一番心配しているのは、食のことです。

 

 

 

家事能力が低いまま「独りシニア」になるとどうなるのか

 

 

 

夫婦健在の場合は良いのですが、

今後老いに伴い、どちらかが倒れるかもしれません。

 

 

 

私の両親の場合、

入院するのが父だとすると、母は家事ができますが、

逆に母が入院した場合を考えると、家事能力が極度に低い父親は、

おそらく外食やスーパーのお惣菜頼みになると思います。

 

フレイル気味ですし、

そもそも安全にスーパーまで行って帰ってこれるのだろうか。

 

 

 

 

父は一度、単身赴任でアメリカにいる時に、

過酷な労働と乱れた食事で心筋梗塞を起こし、救命されています。

 

 

 

独りになり、食が乱れると、

免疫も下がり体調を崩しやすくなります。

 

 

 

家事能力も低く、食事リテラシーの低い父親のような男性は、

独りになると急に老け込んでしまう・・・

そんな様子を医療現場でたくさん見てきました。

本当に一気に老け込みます。

笑顔を見せてはくれますが、とても寂しそうで、

思わずその肩にそっと手を添えたくなるほど。

 

 

 

 

 

かなりリスキーです。

奥様が入院し、

独りの食卓が寂しすぎる上に健康を損なえば、

旦那さんも病院行きです。

 

 

病院では夫婦同室はできませんし、

なるべく健康をキープしておきたいものです。

 

 

 

前回の記事では、家事能力・食リテラシーが低い場合に何から始めるか、

ということを書きましたのでご参照いただければと思います。

 

 

 

前回の記事はこちら👇

シニアが「独りごはん」に備えてやっておくべき3つのこと

 

 

 

独りシニアのリスクに不安を感じる人は大勢いる

 

 

高齢化の実態をもう少し整理してみましょう。

 

 

 

日本の高齢化率は世界で断トツ1位です。

65歳以上の人口が3600万人以上いて、しかも増え続けている・・・

 

 

 

65歳以上の人口全体に占める割合を

高齢化率と呼びますが、

日本は28.6%(2023年)

 

広い世界はどうなっているかも見てみましょう。

 

 

 

 

【高齢化率の世界比較(2023)】

 

1位  🇯🇵日本(28.6%)

2位は 🇩🇪ドイツ(22%)

3位は 🇫🇷フランス(21%)

4位は 🇸🇪スウェーデン(20%)

 

 

ここまでが20%超の国です。

あまり内訳を意識したことがなかったので、個人的には意外です。

やはり日本、断トツなんですね。

 

 

 

5位は 🇬🇧イギリス(18.7%)

6位は 🇺🇸アメリカ(16.2%)

7位は 🇰🇷韓国(15.8%)

 

ここまでが15%以上の国

 

 

 

 

8位は 🇹🇭タイ(13.9%)

9位は 🇸🇬シンガポール(13.2%)

10位 🇨🇳中国(12.6%)

 

ここまでが10%以上の国

 

中国も高齢化が進んでいると聞いていましたが、意外に低いんですね。

日本の半分以下です。

 

 

 

 

11位は 🇮🇳インド(6.7%)

12位は 🇮🇩インドネシア(6.7%)

13位は 🇵🇭フィリピン(5.2%)

 

ここまでが5〜10%未満の国です。

 

 

 

 

なるほど、

日本が「断トツ」と表現される理由が分かりました。

 

 

 

 

1990年には、

日本の高齢化率は14.5%だったのが、

2025年で29.3%になっています。

凄まじいスピード。

 

 

2030年は、32.8%まで進むそうです。

す、すさまじい・・・

 

 

 

こうなると、

警察・消防・自衛隊、介護・看護の働き手・・・

いわゆる、エッセンシャルワーカーの不足は深刻ですね。

 

 

 

備蓄食を見直す順番

 

ということで、

本題に戻っていきましょう。

 

 

今回は、備蓄食について考えてみたいと思います。

 

 

大きな震災もありましたし、

ある程度の備蓄はされていると思います。

 

 

今回見直すポイントとしては、

 

カラダに必要なメニューの基本構成を、

十分に備蓄できているのかどうか、という点です。

 

 

 

 

健康維持に必要な基本構成は、

タンパク源+緑黄色野菜+主食です。

 

 

 

まずこの記事では、

タンパク源をチェックしたいと思います。

 

備蓄のやり方は2つ

 

 

備蓄の基本的な考え方は2つあります。

 

1. 1年以上の長期保存が可能な商品を購入する

2. そこまで日持ちしないものは、ローリングストックする

 

 

1は、一回購入しておけばメンテナンスもそれほど入りません。

たとえば、

アルファ化米とか、長期保存水とか、防災用の食品です。

 

 

 

防災用の食品であるため、

バリエーションはそれほど多くありません。

防災カタログなどで目にする程度の品数です。

 

 

 

一方、ローリングストックというのは、

日常使いしながらストックするものです。

 

 

日常で使う食品を多めに買ってストックしながら、

先出し先入れする、という方法です。

 

 

 

タンパク源の見直しから着手しよう

 

 

 

タンパク源を考えた場合、

1の、長期保存できるものとしては、缶詰がありますね。

 

 

長期保存の缶詰をストック

  • 鯖の缶詰
  • 鮭の缶詰
  • ツナ缶
  • オイルサーディン缶
  • 牡蠣缶
  • 焼き鳥缶
  • 鶏そぼろ

などです。

 

 

鯖のみそ味や甘辛味も売っていますが、

水煮缶にしておくと、料理の幅を広げられますのでおすすめです。

和洋中色々なメニューに使えます。

 

胃腸の調子が悪い時は、

オイル漬けされているツナで下痢してしまう方もいますので、

そいういう時にも水煮缶は役立ちます。

 

 

 

まず、缶詰で1の長期保存を揃えます。

長期保存として購入した缶詰でも、

使ったらまた補充する、という方法でローリングさせてもOKです。

 

 

 

 

ローリングストック〜冷凍肉・魚

 

 

次に、2のローリングストックを考えてみましょう。

 

 

 

 

生の肉・魚も、冷凍庫で保存し、

使ったらまた補充すればローリングストックになります。

 

 

肉は冷凍すると、1〜2ヶ月は保存できます。

 

一方の魚は、肉よりも短く1〜3週間程度保存できます。

 

 

 

なぜ魚の保存期間は肉より短いかというと、

 

魚の油は不飽和脂肪酸という、酸化しやすい脂が多いからです。

酸化されやすいのですが、動脈硬化を防ぐ大切な脂質でもあります。

さらに魚は、肉よりも水分が多いため、傷みやすいという理由があります。

 

 

日頃から多めに買っておき、先入れ先出しで回転させていくと良いでしょう。

 

 

生のもの以外では、

以下のものがタンパク源のローリングストックに使えます。

 

 

魚の加工品

 

 

たとえば、

魚の加工品である練製品を考えてみましょう。

 

 

  • ちくわ
  • かまぼこ
  • 笹かまぼこ
  • さつま揚げ
  • はんぺん

 

などです。

 

塩が添加されていますので、

一度に多量に食べることはおすすめしませんが、

ローリングストックに加えると良いでしょう。

 

 

すぐに使うものは冷蔵し、

多めに買った分は冷凍しておくと良いと思います。

 

 

使う前に冷蔵庫に移して解凍し、

使った分をまた購入する、

ということをすれば立派なローリングストックです。

 

 

 

肉の加工品

 

 

 

肉のローリングストックも考えてみましょう。

 

生肉の冷凍以外では、ハムやベーコンやウインナーなどを

多めに買って冷凍させておくと良いと思います。

 

 

肉の加工品には、発色剤などの食品添加物が使われていることがありますので、

可能であれば、シンプルな食材で作られた製品を見つけられるといいと思います。

 

 

 

 

大豆製品

 

 

大豆製品のローリングストックも考えてみましょう。

 

 

 

 

充填(じゅうてん)豆腐をご存知ですか?

充填どうふは常温保存できますのでローリングストックに最適です。

 

 

 

充填豆腐は、普通の豆腐と作り方が異なり、

密閉容器に豆乳とニガリを直接入れて、加熱して作られたものです。

 

 

密閉されており真空状態に近いので、雑菌に汚染されにくく、

長期保存することができます。

なめらかでクリーミーな食感です。

 

 

どれくらい保存できるかというと、1〜2ヶ月です。

 

 

素晴らしい。

普通は2〜3日ですが、充填されると長持ちします。

 

 

 

他には、

油揚げ・厚揚げも、冷凍しておけば炊き込みご飯やお味噌汁、青菜の炒め物にも使えます。

 

 

 

乾燥大豆や茹で大豆もおすすめです。

特に乾燥大豆は、一年以上、個人的には2年はいけると思っていますが、

長期に保存できる食材です。

 

 

 

きなこも、安倍川餅にすればタンパク質の補充ができます。

普通サイズの切り餅1個で安倍川餅を作ると、

卵1/3個と同じくらいのタンパク質を摂ることができます。

いい数字ですよね。

卵1/3個分も取れる。

 

 

納豆も1週間くらい持ちます。

多めに一パック買っておくと良いと思います。

 

 

 

卵も心強い食品です。
冷蔵すれば2〜3週間持ちますので、
余分に1パック買い足しておくと良いと思います。

 

 

 

乳製品

 

 

カルシウム補給には良いのですが、

飽和脂肪酸も多いため、摂りすぎは控えたい食品です。

 

 

乳製品の備蓄を考えると、

牛乳については、ロングライフミルクというものがあり、常温保存可能です。

高温殺菌して充填しているので

2〜3ヶ月保存できます。

 

チーズも冷凍しておくことができます。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

上記のようなやり方で、

まずは、タンパク源から見直すと良いでしょう。

 

 

家庭に合ったものをローリングストックしておくと

災害時にも役立ちますし、

買い出しが難しい時や、

突然独りご飯になった時に慌てずに済みます。

 

 

 

備えあれば憂いなし!

 

 

次の記事では、野菜+主食 などについてみてみます。

 

 

 

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この記事を書いた人

村上裕梨
村上裕梨

1981年生まれ。父の海外赴任に帯同し、中学時代をタイ・バンコク日本人学校で過ごす。 料理好きの母の影響と、バンコクで触れた世界各国の食文化をきっかけに、食の世界に興味を抱く。 「医食同源」──食の持つ力に魅せられ、管理栄養士となる。 委託給食会社で病院給食業務を2年経験したのち、東京都千代田区の急性期総合病院に転職。 以降20年にわたり、乳児から超高齢者まで、ICU・内科・外科・がん緩和ケアを含む29科の栄養管理に従事。 医学雑誌・医学書・論文執筆、学会発表を多数経験。 2025年、義両親の介護を機に退職。 現在は夫と3人の子どもとともに、瀬戸内海の島を拠点としながら東京都千代田区との二拠点生活を送っている。 医療機関を離れた今も、生活習慣病の予防・改善を目的とした食事療法の普及に取り組んでいる。

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村上 裕梨
Yuri Murakami

【プロフィール】

公的医療機関20年勤務
管理栄養士


病院勤務22年

乳児から超高齢者、ICUから内科・外科・緩和ケア病棟まで
29の診療科の栄養管理に従事。

【略歴】

2003年 委託給食会社に就職
2005年 東京逓信病院に入職
2025年 介護のため退職


【保有資格】

管理栄養士免許

《認定資格》(2025年現在)
糖尿病療養指導士、がん病態栄養専門管理栄養士研修指導師、病態栄養専門管理栄養士、NST専門療法士

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