2. オートファジーの活性化でダイエットがうまくいくのはなぜ?

ここでは生活習慣病を退治する方法をご紹介します。
前回の記事では、
「今の体重の5%を落とすこと」が第一目標
であるとお伝えしました。
今回の記事では、減量する際に考えるべき、
大切な「時間」の要素ついてご紹介したいと思います。
一見地味なゴール設定には、リバウンドを防ぐという重要な目的がある。

生活習慣病の退治を考える際に、
一番はじめに取り組むべきことは、
体重が多い場合は、
今の体重の5%を減らすことです。
5%減らすことで、
異常値の多くを改善させることができます。
もし、
今の体重が標準域に収まっているのに
生活習慣病を指摘されている場合は、
二十歳の頃の体重を思い出してみてください。
二十歳の頃の体重というのは、
最もコンディションが良い時期の体重として目安にされます。

医療機関の減量治療でも、
まず体重の推移を確認させていただきます。
- 幼少期に肥満があったかどうか、
- 二十歳の時の体重はどれくらいだったか、
- これまでの最高体重は何キロで、何歳の時だったのか・・・
もし今の体重が標準域に収まっている場合は、
二十歳のときの体重から大幅に増えていないかを
確認してみてください。
元々痩せ型の人が体重を大幅に増やすと、
標準域の体重であっても、採血結果に異常値をみることがあります。
いずれにせよ、
体重が多い場合に取り組むべきことを再確認してみましょう。
ポイントは、
今の体重の5%を、
3ヶ月から半年かけて落とすことです。
これが、医療機関でも行っている肥満治療のスタンダードです。

巷のダイエットでは、
1ヶ月で5kg落ちました、とか
3ヶ月で20kgやせました、
など、インパクトのある数字が踊っていますが、
見るべきところは何キロ落ちたかではなく、
その後もリバウンドせずに持続しているかどうか、ということです。
巷で謳われているダイエットの成果と比べると、
医療機関のスケジュールはかなり地味にみえます。
しかし医療機関で行っている減量治療は、
リバウンドを防ぎながら安全に行う王道の方法です。
ある程度の空腹感は感じても、
何日間か断食しなければならないとか、
強すぎる空腹感を意志の力でねじ伏せるとか、
その手のものではありません
⚠️ 昼行性の遺伝子に背き続けると、色々な弊害が出てきます。
最も重視されるのは、
昼行性の動物として、遺伝子に合った食事の仕方です。
つまり、
昼行性のリズムを重視します。

肥満外来には、
夜行性に傾いた生活リズムの方も多く通っていますが、
同じエネルギー摂取をしていても、
食べる時間を前倒しすることで、徐々に痩せていく方は多くいます。
シフトワーカーの対処法は別途ご紹介するとして、
まず大切なことは、
できることなら、
夜行性の生活はなるべく避けるということです。
これはヒトが昼行性の遺伝子を持っているからで、
ヒトである限り、抗い難いものだからです。
長い期間抗い続けると、どこかしらに弊害が出てきます。
地球の自転と、私たちの体内時計をピタッと同期させる方法とは?
ところで、
時計遺伝子という言葉を聞いたことはありますか?

時計遺伝子が発見されたのは、
1980年代後半から1990年代にかけてです。
地球のリズムである時点は、一日24時間ですが、
ヒトの一日のリズムは、24.5時間と言われています。
何も調節しなければ、
毎日30分ずつ後ろにずれていくことになります。
地球のリズムとヒトのリズムの微妙なズレを正しているのが、
時計遺伝子です。
どうやってズレを正しているかというと、
強烈な朝の光を浴びることによってリセットします。
曇っていても、蛍光灯の比ではありません。
朝日を浴びる大切さはここにあります。

さらに、時計遺伝子には、親分と子分がいます。
親分は、
目と目の間の奥の方にある視交叉上核(しこうさじょうかく)にいます。
子分たちは、色んなところの細胞にいます。
実は、親分と子分も微妙に時計がズレていて、
親分が指揮をとってビシっと合わせています。
どうやって合わせているかというと、
朝食を合図に、
親分と子分がピタッと合うようになっています。
朝食を食べましょう、と色んなところで言われますが、
その一番の理由は、時計遺伝子のリセットにあります。

朝食を摂るタイミングとして望ましいのは、
起床後の1時間以内、遅くとも2時間以内と言われています。
時計遺伝子が解明されて以来、
時間生物学という学問が発達し、
そこから派生したものに時間栄養学というものがあります。
この時間栄養学の研究から、
これまで重視されてきた
「何を食べるべきか」と同じくらい
「いつ食べるのか」の重要性が言われるようになりました。

結局は、
ヒトの遺伝子に合った「適切な時間」に食べて
ヒトの身体に合った「適切な食物」を食べて
きちんと身体を動かす、
というシンプルなことが健康を維持します。
「いつ」「何を」食べるのか。
この「いつ」についての時間的な要素が、
ヒトの「細胞のメンテナンス機能」に大きく関わっている
ことが分かってきました。
「細胞のメンテナンス機能」とは
一体なんのことかというと・・・
「オートファジー」のことです。

この言葉、どこかで聞いたことはありませんか?
あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、
2016年に大隈良典氏が「オートファジー」の研究で
ノーベル医学・生理学賞を受賞されました。
オートファジーというのは、
身体の新陳代謝を行う、細胞の「分解」のメカニズムです。
筋タンパクや、脂肪細胞を分解することによって、
細胞の健康をメンテナンスする仕組みです。

そしてポイントは、
オートファジーは「絶食」によって活発になるという点です。
食事のリズムを管理して、
適度な「絶食」状態を設けることで、
オートファジーを活発にすることができるのです。
この、「食べる時間をコントロールする」という手法は
時間栄養学という分野で研究されてきました。
この時間栄養学の研究からすると
適切な絶食の時間は「12時間」であるとされています。
絶食の時間が長くなりすぎると、
オートファジーが過剰に働き、
例えば
分解された脂肪が肝臓に蓄積されて脂肪肝となってしまったり、
高齢者においては、骨格筋量が減少し、
サルコペニアなどのリスクとなることがわかっています。

生活習慣病の予防と是正のためには、
まずこの「食事時間の設定」が大切なのです。
12時間の絶食が望ましいということは、
たとえば、
- 夕食を19時に食べ終えたら、朝食は7時。
- 夕食を20時に食べ終えたら、朝食は8時。
- 夕食を21時に食べ終えたら、朝食は9時。
絶食の間隔を12時間あけるということですね。
昼行性のヒトの代謝を考えると、
夕食が21時以降になるのは避けたいところです。
いかがでしょうか?
何となくイメージできそうでしょうか?
私自身を振り返ると、
子供に合わせた早い夕食なので、
18時までに食べ終えて、朝食は7時前後に食べています。
ちょうど、12〜13時間くらいの絶食です。
このお話をすると、
朝食を摂る習慣のない患者さんからは、
「朝ごはん食べないのですが・・・」と相談を受けます。

朝食をとる意義は、
時計遺伝子の調整にあります。
他にも、体温を上げたり、
意外なことに、血圧を下げる効果も報告されていたり、
時間栄養学を考えれば、
朝食は摂った方が良いということになりますが、
そのボリュームには、大小あっていいと考えています。
次の記事では、
「では具体的に、朝食に何を食べるべきか」
についてご紹介したいと思います。


