8.食後高血糖を抑えれば眠気覚ましのコーヒーは不要①

ここでは、生活習慣病を退治する方法をご紹介します。
前回は、塩の話。
時間栄養学という領域から、
「減塩を緩められる時間帯がある」ということをお伝えしました。
メリハリをつけながら、塩は控えめがいいよ、というお話でした。
今回からは、糖質の話に移ります。
血糖コントロールの話です。
食事の摂り方を変えてしまえば、
食後の眠気覚ましのコーヒーは不要になります。
午後のパフォーマンスもキープできます。
糖質の基本的な考え方は3つあるので
本記事ではその一番目をご紹介します。
3つの記事を読めば、
コツがわかって
今よりももっと楽に
血糖コントロールできるようになると思います。
糖質制限とかロカボとか。まずは糖質の基本のキを押さえよう!

- 1型糖尿病でも、
- 2型糖尿病でも、
- 妊娠糖尿病でも、
- その他の糖尿病でも、
- もちろん糖尿病でない方も、
血糖コントロールを考える際に必要な
食事のポイントは3つあります。
1つは、糖質の種類。
2つ目は、三大栄養素別の血糖への変換率。
3つ目は、三大栄養素別の血糖上昇スピード。
血糖コントロールの必要な方に
これを話すと
「初めて聞きました」と言われるので、
ここは専門職として
広めていかないといけないな、と思うポイントです。
まず、本題に入る前に
「糖質」の定義について確認してみましょう。
糖質とか炭水化物とか、呼び名に混同することがありますが、
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
です。
食物繊維は、血糖上昇にほとんど関与しないので、
血糖コントロールを考える際には、
糖質をターゲットにします。

さて、
本記事では、
一つ目の
糖質の種類を押さえていきましょう。
糖質の種類は、
血糖コントロールにおいて非常に大切なポイントです。
糖質には、3つの種類があります。
- 単糖類
- 少糖類
- 多糖類
分子量の小さい順に
単糖類 < 少糖類 < 多糖類です。
分子量の小さい順に、血糖上昇スピードが早いです。
↑ここがポイント。
つまり、
血糖を急上昇させたくなければ、
単糖類を一気にたくさん摂ることは避けた方が良い、
ということです。

以下、もう少し解説しますね。
教科書的なお話しですが、
ここを知ってしまえば血糖コントロールもしやすくなります。
まず、
単糖類というのは、
これ以上分解できない、糖質の最小単位です。
単糖の状態でのみ、私たちは糖質を吸収できます。
単糖類のうち、
私たちがよく口にするものは、
- ブドウ糖
- 果糖
- ガラクトース です。
ガラクトース・・・
馴染みがないかもしれませんが、
以下のように、
単糖同士がくっついたものは、
聞いたことがあるのではないでしょうか?
- ブドウ糖+果糖 =砂糖
- ブドウ糖+ブドウ糖 =麦芽糖
- ブドウ糖+ガラクトース =乳糖
ガラクトースは、
母乳や牛乳の甘みの素である、
乳糖の構成成分です。

単糖類が2個くっついてできた糖質を
二糖類といいます。
二糖類の代表選手が、
・砂糖(ショ糖)
・麦芽糖(水飴の原料)
・乳糖(母乳・牛乳の甘みの素)
ということですね。
さらに、単糖類が何個かくっついたものを
少糖類と呼びます。
実際には、
単糖が3個から9個くっついています。
3〜9個くっついているものを、少糖類、
別名オリゴ糖と呼びます。
オリゴ糖なら
聞いたこともありますよね。
さらにさらに・・・
単糖が、10個以上繋がっているものを、
多糖類と言います。

例を挙げてみると、
私たちがよく食べる多糖類は、
・デキストリン
・でんぷん があります。
デキストリンは、ブドウ糖が
10個〜数百個繋がったもの
でんぷんは、ブドウ糖が
数百〜数十万個繋がった、長い鎖です。
ややこしいですが、
ここまでが、糖質の種類です。
ちなみに、
多糖類の仲間で、
私たちが消化できないものを、食物繊維と呼んでいます。
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維

これが分かれば、控えるべき食品がわかる。
さて、糖質の種類が分かったところで、
次に、吸収スピードを考えてみたいと思います。
まず
大前提として、
ヒトは、糖質を、単糖類の状態で吸収します。
つまり、ブドウ糖、果糖、ガラクトースの状態で吸収します。
ブドウ糖、果糖、ガラクトースを食べると、
速やかに、小腸で吸収されます。
例えば、糖尿病患者さんが低血糖になってしまった時は、
ブドウ糖を摂って血糖値の回復を図りますが、
これは、速やかに血糖をあげる目的です。
(血糖というのは、血液中のブドウ糖濃度のことを示します。)
血糖を急激に上昇させたくない場合は、
単糖の状態で糖質を摂るのは避けたいことです。

続いて、
二糖類を考えてみましょう。
二糖類は単糖が2個くっついたものです。
小腸で、分解酵素が結合を一回ジョキっと切ってしまえば、
二糖類から2個の単糖が生まれ、これもまた素早く吸収されます。
二糖類も、血糖を急激に上げてしまうので、
低血糖になっている場合以外は控えたいものです。
最後に、多糖類を考えてみましょう。
多糖類は、
単糖が何十個も数百万個も繋がったものですので、
結合をブチっ、ブチっと切っていくのに長い時間が必要です。
そのため、単糖にまで分解されるのに時間がかかり、
血糖の上昇もゆっくりとしています。
つまり、
低血糖でブドウ糖を摂らないといけない!というケースを除いて、
血糖コントロールを考える場合は、
分子量の大きな多糖類の形で取り入れると、
食後の高血糖を抑えることができる、ということです。

ここまでをまとめると、
控えたいのは、
分子量の小さい単糖類と二糖類を一気にたくさん摂ることです。
糖質を含む食事を摂れば血糖が上がるので、
食後に高血糖になるのは当たり前なのですが、
その上がり方が
スパイク状に一気にギュインと上がってしまうのがいけないのです。
繰り返されるスパイク高血糖が、血管の内皮細胞を傷つけ、
動脈硬化を進展させる原因となります。
食後の眠気や倦怠感がでる原因も、この食後の高血糖にあります。
食後高血糖さえ抑制できれば、
眠気覚ましのコーヒーはそれほど必要なくなります。

そのため、
控えるべきは、
この食後の行き過ぎた高血糖やスパイク血糖です。
これを防ぐためには、
まず、
単糖類をそのまま摂るのを控えたい、ということです。
(繰り返しますが糖尿病患者さんで、
低血糖に陥ってしまったケースは除きます。)
では、
単糖類をそのまま摂るケースとは、
どんな時なのでしょうか?

近頃は注意しないと、
簡単に単糖を単体で取り込んでしまうので、
市販品を購入する際には
栄養成分表示を確認すると良いでしょう。
栄養成分表示で、
「ブドウ糖果糖液糖」とか、
「果糖ブドウ糖液糖」という言葉をみたことはありませんか?
(ブドウ糖または果糖の、
入っている割合の多い方が先頭にきます)
この手のものは、清涼飲料水などにたくさん入っています。
血糖コントロールが必要な場合は、
清涼飲料水は控えた方が良いと思います。
一気に血糖が上昇するので、
飲まない方が得策です。
以前、こうお話ししていたら、
清涼飲料水メーカーにお勤めの患者さんがいて
少し複雑でしたが、
血糖コントロールが必要な方は
飲まない方がいいと思います。
特に、子供には気をつけてあげたいものです。

では続いて、
単糖類の次に、
吸収スピードの速い糖質、二糖類について考えてみましょう。
分子量の小さい方が速やかに吸収されますから、
二糖類にも注意が必要です。
二糖類の代表選手は
砂糖、麦芽糖、乳糖ですね。
麦芽糖は多量に食べることはあまりないと思います。
乳糖も、乳製品由来ですが、これも、そこまで多量には摂らないと思います。
問題は、砂糖です。
調味料に使う程度の量は良いとして、
血糖コントロールを難しさせるのは、この砂糖ですよね。
お菓子とか、菓子パンとか、美味しい甘味のものですよね。
これが現代人にとっては控え難い。
なぜって、とても美味しく感じるからです。

たまには良いとして、
これを習慣的に結構な量を摂るのは控えた方が良いと思います。
日本人は、人種的に糖尿病になりやすい背景があります。
さらに糖尿病は遺伝性素因が強いので、
直系の親族に糖尿病の方がいる場合は、
あなたも血糖コントロールを意識した方が良いといえます。
そもそも、
遺伝子変化のスピードというのは、非常にゆっくりとしたものです。
1000年以上かけてゆっくりと変化するのが遺伝子のスピードです。
1000年前というと、いつのことでしょうか?
1000年前となると、
平安時代くらいです。
私たちの遺伝子から考えれば、
少なくとも、平安時代を生きた人と同じような食事の方が
安全と言えるのではないでしょうか。
平安時代に
今のようなお菓子やデニッシュ、甘いものがあったかというと
無かったですよね。

少なくとも、
平安時代くらいに無かったものを短期間に多量に摂ると、
遺伝子に合わないことをしているので、
それが続くと、
体のどこかしらに弊害が出てくるのは自然な流れです。
現代日本人は、戦後に食の西欧化が進み、
極めて短期間に、
昔の食事から大きくかけ離れてしまったので、
生活習慣病などが爆発的に増えて、
国民病になったりしているのが現状です。
とはいえ、
一度美味しい味を知ってしまった私たち・・・。
やっぱりたまには食べたくなりますよね。
頻度の問題で、
たまにであれば良いと思います。
避けるべきは、週に何回か習慣的に食べてしまうこと。

以上をまとめると、
血糖コントロールを考える際には、
糖質の種類が大切です。
低血糖になっている場合を除いて、
通常は、
単糖類と二糖類を一気に多量に摂らないこと。
これが血糖コントロールにおいて
一番大切な基本のキです。
次の記事では、二番目のポイントについてお伝えします。


