病気になる食卓

病院に運ばれる人の食卓 5

目安時間 10分
  • コピーしました

 

太りやすい体質は何歳までに決まるのか?
「水を飲むだけで太るんです〜」
と言われることがあります。

 

いやいや、そんなことあるわけないじゃないですか、とお返しするのですが、
お気持ちは分かります。
太りやすい、ということですよね。

 

この太りやすさは、体質か?と聞かれると、
半分YES。

 

この太りやすい体質というのは何なのかというと、
「脂肪細胞の数」に由来します。

 

 

脂肪細胞というのは不思議なもので、
数が増える時期というものが存在します。
生まれてから死ぬまで、食べすぎたから増えるというものではありません。

 

では、いつ増えるんですか?というと、
大きく3つの時期があると言われています(後述します)。

 

ただしポイントは、
一度増えた脂肪細胞の数は、大人になっても減らないということです。

 

ここがポイントなのです。

 

つまり、後述する3つの時期に、
必要以上に脂肪細胞の数を増やしてしまうと、
つまり必要以上に太ってしまうと、
増えた脂肪細胞の数は、もう減らない、ということが分かっています。

 

 

脂肪細胞の数は子供の頃に増えます。

 

大人になって太るというのは、
その一個一個の脂肪細胞が肥大化する、という状態です。
肥大化した肥満細胞をシュリンクさせるのが、
ダイエット、ということですね。

 

小児肥満という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
小児肥満は、
大人になってからの健康リスクを増やすことになりますので、
お子さんがいる方は、
幼少期に肥満させないということは、
子供の未来の健康を守る、大切なギフトであるということができます。

 

「水を飲んでも太るんです〜」というケースは、
子供の頃の脂肪細胞の数が関係しているのかもしれません。

 

 

でも飢餓の時代、ヒトにとって大事だったのは
食べたエネルギーを、できるだけ効率よく脂肪に蓄えることでしたので、
太りやすい体質は、かつては生き延びやすい体質だったとも言えます。
ただ、今は飢餓の時代ではないので、そこがちょっと難しいところです。

 

それでは、脂肪細胞が増えるのは子供の頃ですが、
具体的にいつなのでしょうか?

 

脂肪細胞の数が増えるのには
3つの時期があると言われています。

 

  • 胎児期
  • 生後1〜2年ごろ
  • 思春期

 

この限られた時期に増えた脂肪細胞の数は、
痩せてもほとんど減りません。

 

一つ一つ見ていきましょう。

 

 

 

まず、胎児期は、お母さんのお腹の中にいる時期です。

 

 

多くのお母さんは、赤ちゃんのことを考えて
食事に気を遣ったりしますので、
この時期に脂肪細胞が増えすぎて困るということは、そこまで多くはないかもしれません。

 

次に増える時期は、生後1〜2年ごろです。

 

胎児期よりも、生後1〜2年ごろが注目されています。
この時期は、The First 1000 days とも言われ、
妊娠期間の約270日と、生後2年間を合わせた期間を指します。

 

この時期に、
    • 栄養状態
    • 睡眠
    • 腸内環境
    • 食習慣
    • 運動習慣

 

が整っているかどうかが、

将来の肥満や糖尿病のリスクに大きく関係すると考えられています。

 

 

そして、
肥満しない方がいい要注意な年齢もあります。
それが、小学校に入る前の5〜6歳です。

 

子供の体格は、一度、5〜6歳で肥満度が下がり、その後また上昇していくと言われています。

 

年齢  BMIの変化
0~1歳  急激に増加
1~5歳  徐々に低下
5~6歳頃  最も低くなる
6歳以降  再び増加し始める

 

通常は、肥満度が再び上昇し始める時期は
6〜8歳と言われています。

 

この時期をアディポシティ・リバウンド(Adiposity Rebound)といいます。
一度減った肥満度がまた上昇するので、
リバウンドという言葉が使われています。

 

一般的な目安として、
アディポシティ・リバウンドは、
6〜8歳の頃に起こるのが目安とされていますが、
この時期が目安よりも早い場合に、将来肥満しやすいことがわかっています。

 

つまり、通常6〜8歳で再び肥満度が上昇していくところ、
それよりも早い、小学校入学前の5〜6歳に肥満すると、
将来の肥満や、肥満に起因する糖尿病、高血圧、メタボのリスクが高くなることがわかっています。

 

 

最後に、脂肪細胞の数が増えやすい思春期について。

 

思春期も、乳幼児期と並んで、脂肪細胞の数が増えやすい時期です。
この時期は、

 

  • 身長が急激に伸びる
  • ホルモンが大きく変化する
  • 筋肉や骨が増える
  • 体脂肪の分布が変わる

 

など、体全体が大きく作り変えられます。

 

そのため、脂肪組織でも、脂肪細胞の新生(Adipogenesis)が活発になると考えられています。

 

特に、女子は

女性ホルモン(エストロゲン)の影響で、

 

  • お尻
  • 太もも
  • 皮下脂肪

 

が増加します。

体脂肪率は、男子約15%前後、女子20~30%程度まで上昇します。

 

ここまでは、成長の過程ですので問題ありません。
問題となるのは、この脂肪細胞の新生が活発になる思春期に、
必要以上に食べすぎて肥満してしまうことです。

 

 

正常体重の人では、
脂肪細胞数は18歳頃まで増加し、その後プラトー(横ばい)になる、という研究報告もあります。

 

太りやすい体質は、何歳までに決まるのか、というテーマでお話ししましたが、
つまりは、18歳頃までに決まる、ということがいえます。

 

注意したいのは、
脂肪細胞の数は、大人になってダイエットしても減るものではありません。

 

幼少期から思春期にかけて、肥満した状態であり続けることは、控えたいものですね。

 

 
 
【参考文献】

  1. Spalding KL, Arner E, Westermark PO, et al.
    Dynamics of fat cell turnover in humans.
    Nature. 2008;453(7196):783-787.
    doi:10.1038/nature06902
  2. Palacios-Marin I, et al.
    Childhood obesity: Implications on adipose tissue development.
    Obesity Reviews. 2023;24:e13627.
  3. Ning X, et al.
    The role of adipose tissue in puberty and reproductive health.
    Frontiers in Endocrinology. 2025;16.
    doi:10.3389/fendo.2025.xxxxx
  4. Horwitz A, et al.
    Adipose Tissue Hyperplasia and Hypertrophy in Common and Syndromic Obesity.
    Cells. 2023;12(16):2084.
  5. Holtrup B, et al.
    Puberty is an important developmental period for the establishment of adipose tissue mass and metabolic homeostasis.
    Adipocyte. 2017;6(3):224-233.
  • コピーしました

この記事に関連する記事一覧

この記事を書いた人

村上裕梨
村上裕梨

1981年生まれ。父の海外赴任に帯同し、中学時代をタイ・バンコク日本人学校で過ごす。 料理好きの母の影響と、バンコクで触れた世界各国の食文化をきっかけに、食の世界に興味を抱く。 「医食同源」──食の持つ力に魅せられ、管理栄養士となる。 委託給食会社で病院給食業務を2年経験したのち、東京都千代田区の急性期総合病院に転職。 以降20年にわたり、乳児から超高齢者まで、ICU・内科・外科・がん緩和ケアを含む29科の栄養管理に従事。 医学雑誌・医学書・論文執筆、学会発表を多数経験。 2025年、義両親の介護を機に退職。 現在は夫と3人の子どもとともに、瀬戸内海の島を拠点としながら東京都千代田区との二拠点生活を送っている。 医療機関を離れた今も、生活習慣病の予防・改善を目的とした食事療法の普及に取り組んでいる。

村上 ゆり
Yuri Murakami

【プロフィール】

公的医療機関20年勤務 | 29科横断
管理栄養士


病院勤務22年

乳児から超高齢者、ICUから内科・外科・緩和ケア病棟まで
29の診療科の栄養管理に従事。

【略歴】

2003年 委託給食会社に就職
2005年 東京逓信病院に入職
2025年 介護のため退職


【保有資格】

管理栄養士免許

《認定資格》(2025年現在)
糖尿病療養指導士、がん病態栄養専門管理栄養士研修指導師、病態栄養専門管理栄養士、NST専門療法士

👉 noteへ